オール・タイム・ベスト書評

クリスティ,A


(2)『そして誰もいなくなった』
 このリストの二番目にこの作品を見たときには相当不思議な気がしたものです。そんなに良かったっけと。随分アン・フェアな話だったという記憶だけが残っていました。
 ところが読み直してみて驚きました。アン・フェアだと思った箇所はすべて全然そうじゃなかったのです。クリスティ女史得意の描写法にまんまと引っ掛かったわけです。とにかくこの作品において女史をアン・フェアだと言って責めることはできません。せいぜい不親切だといったところです。
 この作品では、見立て殺人のパターンにのっとって見事に十人の人間を殺しました。そのサスペンスは比類のないものです。またフェアなことは保証します。
  74点。但し再読して驚愕度84点。



(5)『オリエント急行殺人事件』
 大雪のため立往生したオリエント急行。そして発見された老人の死体。その死体に残る十二の傷跡 −おなじみの『オリエント急行殺人事件』です。
 これはなかなかの名作です。難を言えばポアロが推理よりも直感を多用したこと、乗客たちの素性が知れたのちは真相が自明の理になったことの二つですが、これは仕方がないでしょう。
  78点。但し国際性72点。
  十ヶ国人が登場しました。東洋人も出して欲しかった。



(6)『アクロイド殺人事件』
 この作品がクリスティのベストか否かは各人に任せるにしても、これが女史の作品の中で最もセンセーショナルなものであることは疑いがありません。そしてその評価は是と非に割れるところです。
 私自身では是です。このトリックは結局『そして誰もいなくなった』と同じく描写法−嘘は書かない−にあります。この極限が××者××人という大トリックになるのです。その上また伏線の周到さは『そして−』の比較になりません。
 しかし、女史を弁護するあまり、「読者たるもの鋭くさえあれば犯人を推定し得るはず。」などという人もいますが、私にはとても信じられません。
  83点。但し犯人がわかった人への尊敬度91点。



(24)『ナイルに死す』
 リンネットとジャックリーンは古くからの親友だった。リンネットは大富豪だったが、ジャックリーンは一文無し同然だった。しかしジャックリーンには愛するサイモンがいた。その恋人をリンネットが奪った。二人の新婚旅行の後をつけ回すジャックリーン。ナイル川上の遊覧船で惨劇は起こった。
 ポワロは最後に「愛はあらゆるものを正当化すると言われるがそれは嘘だ。」と述べています。僕もそう思う。
  75点。但し純愛度92点。



(26)『ABC殺人事件』
 アンドーヴァー(Andover)でアッシャー(Ascher)夫人が、次いでベクスヒル(Bexhill)海岸でベティ・バーナード(Barnard)が殺害された。死体の傍らにはABC鉄道案内が置かれていた。不敵にもポワロに挑戦状を送りつけてくる殺人者ABCの正体は……。
 連続殺人事件をポワロは心理的捜査で解決します。まあ、小中学生のうちに読んでおく名作の一つですな。
  72点。但し郵便事故度70点。


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