クレイスン,C.B.『チベットから来た男』

クレイスン,C.B.『チベットから来た男』


 黄金時代の米国不可能犯罪派の本邦初登場。ガチガチの本格趣味が心地よい。

 シカゴの大富豪アダム・メリウェザーは、日系人ジャック・レフナーからチベットの秘伝書を買い入れた。ところがその夜レフナーは泊まった安ホテルの部屋で絞殺されてしまう。その凶器となった絹の布にはサンスクリット文字が刺繍されていた。
 おりしもシカゴのホテルにレフナーから経典を掠め取られたラマの高僧が滞在中。マック警部補から事件への関与を求められた歴史学者のウェストボロー教授は、ラマ僧の足取りを追ってメリウェザー邸に向かう。
 チベット美術品の蒐集家であるメリウェザーの邸には奇怪な仏像や装飾品を収めた美術室があった。魔術的なものに引かれる当主には、ラマ僧を歓待しながらもある思惑があるようだったが……。

 好々爺のウェストボロー教授は、事件に引きずり込まれてあたふた奮闘する。だが、その知恵の切れ味は鋭い。
 道具立ての凝り加減がとにかく凄い。だがおどろおどろのオカルト趣味に見える背景も実は神秘主義者への痛烈な皮肉を含んでいた。全ての関係者を集めて再現される密室内の怪死の謎解きには迫力があった。


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