切り裂きジャック。一八八八年四月三日のエマ・スミス事件を皮切りに十一月九日のメアリ・ケリー事件まで少なくとも七人の売春婦を切り刻んだ男。腹を切り裂き臓腑を引きずり出し、必ず子宮を持ち去っていたという。犯行の残虐さ、猟奇さ、そして正体の不可解さは神秘的ですらあった。
ジャックはそのメスの巧みさから狂った医者か医学生だと考えられている。またその明敏さから狂気の程度も外見からは鑑別不能のものに違いない。そして十一月九日を最後にその足取りはぷつりと切れている。死んだのか。ロンドンを去ったのか。それとも狂気が自然治癒したのか。
ここに一人の医師がいる。彼の名は一種の犯罪を扱った読物で知られていた。彼が妻を失った三月後にジャックは犯行をはじめ、ジャックが消えた半年後に彼は再婚している。彼は自作の中で自分の結婚について触れていた。その医師の名はジョン・H・ワトスン。