◆10月21日(金)
午後半休がとれたので部屋を掃除してから出立する。
18:45東京発ひかり、座れず。でもそんなに混みはしない。デッキで立ちん坊で『探偵小説四十年』読み耽る。
21:00名古屋着。21:30刈谷着。こちらには僕が以前お世話になったことのあるN御夫妻が住んでいらして、今夜は泊めていただく約束。
旦那さん、まぶさん、39歳。現在システム構築のお仕事だそうだが話をよくよく伺っても未だに正体不明。奥さん、すみさん、35歳。翻訳と通訳。アジア大会でもお仕事してきたそうな。このお二人は1年半前に東京からUターンされて、久々の御対面。
今回の旅行の目的話す。江戸川乱歩生誕百周年。「紀伊半島猟奇行」載った<糸納豆>見せて感心される。まるでフォントのような書き文字だって。すみさん、卒論が南方熊楠だったそうで、熊楠関連の話題で盛り上がる。乱歩も1冊紹介してほしいと言われてしまった。すみさんは最近NIFTYにはまっているそうで、たこいくんにメール出そうかなあと言ってらした。もし、ほんとに行ったらよろしく。
その他お二人の馴れ初めとなった筑波時代の話。僕なんかには筑波イコール管理というイメージがあるけど、黎明期の方々は無茶苦茶やってらしたのね。
それから御当地東海道ということで、マンガの『浮浪雲』の話。僕、最近『浮浪雲』に凝っているんです。ででんででんでんでん。
3:00まで飲んで激論してお開き。友あり、遠方に訪ねる。また楽しからずや。
◆10月22日(土)
午前中はのんびり過ごし、お昼過ぎに出発。駅まで見送っていただいた。
目指す名張は名古屋から近鉄特急で1時間半。遠いには遠いが交通の便は至極よい。15:00着。
降りたところで<SRの会>のSさんと新入会員にばったり。まずは乱歩記念コーナーがある名張市立図書館へと向かう。1年前に来たことある僕が道案内。
<大乱歩展>なるものが2階の特別室で開催されている。去年来たときよりものが増えている。貼雑年譜の実物に初めてお目にかかれて大感激。めんこやら双六やらのがらくたが笑える。映画のポスターとかはさすがに把握できておらず面食らう。TVモニターには『少年探偵団』(BD7だよ)が延々流されていた。
本の数が前より少ないと思ったが、1階の常設コーナーにごっそり残っていた。本当は立入禁止だったけどこっそり見てまわる。やっぱりあそこは凄い。こんな図書館身近にほしい。
あとで聞いたが、SRの長老会員の方々の間に死んだら蔵書を寄贈しようという動きがあるそうな。名張はミステリファンにとってメッカとなるだろう。引退後はここに住むことにするか。
そして旅館へ。ミステリが本職のYさんが買ってきた銘菓<二銭銅貨>を御馳走になる。本当にあったのかと感動したが、普通の瓦せんべいにただ「二銭銅貨」と文字が入っているだけ。甘いし1枚食べたらちょっと2枚は食べられない。何でも鮎川哲也に、死体の口から発見されたせんべいのかけらに二銭銅貨の文字があって事件が名張と結びつくという話があり、2時間ドラマ化もされたんだそうだ。しおりにも書いてあった。
18:00開宴。30人ほど。今回は新人が多い。これは別冊宝島の「このミステリーがすごい」に触発された現象。最高年齢はよくわからないがコッキーくんの異名を取る竹下終身会長あたりか。最少年齢は別府から学校を休んできた中学2年生。末恐ろしい。その子のお父さん(38歳)がかなりのマニアだそうだ。息子世代の出現に直面する人多数。
お勧め本では探偵クラブ第3期の井上良夫『探偵小説のプロフィール』が一番人気。評論において乱歩は井上の真似をしたと言い切る人あり。こいつは読まねば。
そのあと創元推理クラブ十数名も加わっての大ゲーム大会。第1ゲームはグループ対抗のクイズだが、問題はミステリとはなんの関係もない。僕のチームはなんとか勝利し、僕は賞品として<別冊宝石>江戸川乱歩還暦記念号(昭和29)を手に入れる。表紙は乱歩さんの肖像画。これだけで今回の旅費の4分の1はもと取った。とっても嬉しい。
そして雑俳。お題は創元社の戸川さんよりいただいた「うつし世は」。なかなかむつかしい。「うつし世は二銭銅貨が九百円」がまずまずの出来。
ゲームのあとは酒盛りが続く。
竹本健治の理系嗜好が嬉しい、とかいう話をしたかな。これが綾辻行人だと『殺人方程式』には文系の理系コンプレックスがありありと出てしまっていて最低。竹本も文系で『匣の中の失楽』でも物理専攻の影山をあまりうまく使いこなせてはいない。だが、壁に体当たりを繰り返すといつしか量子トンネル効果で密室から脱出できるというとんでもない発想やら、「閉じ箱」の世界に揺らぎがなかったら、やら、物理を詩的に昇華してくれている。小栗虫太郎にしてもアインシュタインの宇宙とド・ジッターの宇宙がどうだこうだという話をして、結局は敷物のひだが被害者を打ち倒したとかなっちゃうんだものなあ。中井英夫はまた理系嗜好とは別のところの人でもって……。
明日もあるということで、2:00でお開き。
◆10月23日(日)
本日のメインイベントは名張市主催の<ミステリー夢舞台>。参加者の手元には前もって乱歩賞作家の石井敏弘作『北斗七星の迷宮』が送られてきている。名張に集結した探偵志願者たちは町を歩きまわって犯人を探すというわけ。800人くらいのエントリーだった。
10:45名張小学校にて開会。市長の挨拶で「北は埼玉から、南は九州までの方々に来ていただきました」とあって爆笑。どちらもSRだ。貢献しているなあ。
11:00出発。作中作では名張市の7ヶ所で殺人が起こったという設定。登場人物に扮した役者8人が町を徘徊し、それに質問してもよいという。
まず我々が向かったのは勿論、乱歩先生の生誕記念碑。静かな町並みをぞろぞろ歩く。記念碑のあたりの狭い路地に大人数が群がる。住んでいる人たちにはさぞ迷惑だったろうなあ。そして記念碑に再会。現し世は夢、夜の夢こそまこと。
ポイントのひとつで登場人物2人発見。一人は被害者だ。誰に殺されたんですかと聞いてみたが当然答えてくれない。サインをねだる小学生など。
名張唯一の観光名所(普通の意味での)藤堂屋敷でヒントをもらう。そんなものもらうまでもなくとうに我々はダイイングメッセージの暗号を解いている。だが、その名前が本当に犯人なのか、動機が何かが、30名でけんけんがくがくやってもはっきりせず。謎のレポーターに僕、動機がわからんと力説してしまったが地元のTVに流れたりしたのかなあ。
ポイントを半分回って昼食。名物伊賀肉のステーキ。なにはともあれこの小説の仕掛けは結構おもしろいという評判。石井の受賞作『風のターンロード』よりも遥かにおもしろいって。僕はそんなもん読んじゃないから評価は下せない。
そのあと別行動。僕は残りのポイント回ったが何もなし。小学校に戻りお土産見る。乱歩関係では<二銭銅貨>の他に<乱歩ぱい>と<乱歩のふるさと>があった。<乱歩ぱい>あとで会社で配ったがなかなか評判よかった。
15:30解決編は体育館で上演された。街角にいた役者3人が登場人物。そうか、最初から3人しかいなかったのか。これはだまされた。中身についてはそれほど無理なくまとまったか。動機探しと言えるほど凝ったものではない。僕は正解。でもSRの人たちはひねて考えすぎて間違えた人多し。名張市よりの名探偵認定証もらう。
このあと乱歩作品の一人芝居とかもあったようだが、所用で僕は早めに離脱。
帰りの電車の中では<別冊宝石>読み耽る。
なかなか賑やかに楽しく行ってこれました。でも一人旅の方がメンタル面への刺激は大きいな。とすると、次はどこへ行こうか。