東野圭吾『白夜行』

東野圭吾『白夜行』


 恒例、夏休みの宿題ともなった昨年のベストの落穂拾い。
 『秘密』で一般にもブレイクした作者がさらにその力を世に知らしめた作。『このミス』2位を獲得。

 二十年前の大阪、建造途中で放棄されたビルの一室で質屋の店主桐原洋介の刺殺死体が発見された。担当した笹垣刑事は被害者と最後に会った顧客の西本文代に目をつけるが、確証が得られないうちに文代は事故とも自殺ともつかぬガス中毒死を遂げる。
 結局迷宮に入ったこの事件。だが、笹垣の胸のうちには、桐原洋介の息子亮司と西本文代の娘雪穂という小学五年生と六年生の暗い印象が焼き付いているのだった。

 そして物語は桐原亮司と西本雪穂のその後を周囲の目から淡々と描いていく。
 高校時代の亮司は学校では目立たないながらも裏でやばいことをしている得体の知れぬ存在。一方、唐沢家の養女となった雪穂は典型的なお嬢様学校に通い美しく花開く。だが、両者の周辺に相次ぐ不審な事件。具体的に何があったとも記されない。二人の結託も明示はされない。だが、不気味などす黒さを後味に残していく。
 そして、二十年の歳月。

 二人がこういう生き方をしなければならなかったのはわかる。しぶとく二人の犯罪の軌跡を追っていた笹垣刑事は、二人のことをハゼとテッポウエビのような相利共生の関係だと評する。
 追い込まれてこんな関係になった。本人たちが言うように、太陽の下を生きられず白夜の夜を昼と思って生きてきた。
 二十年の後に、彼らの手口から最初の事件の真相を突き止めるというやりくちは見事としか言いようがない。

 ただ、実に惜しいことに幕の引き方がいまひとつかなあ。
 彼らには目的があってこうしてきたわけではないので、そもそも明確なゴールをつけにくい。妙な言い方だが、惰性で必死に生きてきたように見える。だから物語の結末は何もあの時点でなくてもよかったはずだ。
 だけど大きな野望なんて付け加えたら、そのまんまマンガになってしまうからなあ。難しいところである。
 少女マンガにありそうな筋立てだと思いつつ読んでいた。あと、近づいてくる男を食い物にして自らのレベルアップを遂げる女性という点では、手塚治虫『人間昆虫記』を連想させられた。

 なお、後年に凄腕のハッカーとなる桐原亮司の成長過程が描かれるため、コンピュータの発展史も盛り込まれており、技術系の人間にはそこはかとなく嬉しかった。


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