石塚公昭『乱歩 夜の夢こそまこと』

石塚公昭『乱歩 夜の夢こそまこと』



 人形作家である作者による乱歩に関する作品を集めた写真集。
 表紙は気球から縄梯子でぶら下がる乱歩の写真。勿論乱歩が実際にそんなことをしたわけでなく、作者が場面設定したもので、あちこちでお目にかかりすっかりお馴染みになった。
 本書の最初の構想はこのような乱歩の人形の写真集だったらしいが、途中からどんどん方向性が変わっていったらしい。乱歩の世界をいろいろな技法を用いた写真で再構成するものになり、人形の写真集では既にない。

 それでも最初の二つでは乱歩世界の準主役級が人形で登場。怪人二十面相と黒蜥蜴である。二十面相はひょうきんな悪党面で楽しく、黒蜥蜴はこの世のものでない妖艶な美女である。明智小五郎役は人間の俳優が務めるが、その対比はよい。

 それ以降の作品は、乱歩自身が作中人物、多くは犯人役を務める。屋根裏に上り、人間椅子に潜み、押絵と旅し、月光のビルの谷間に不気味に笑う。
 乱歩世界に乱歩その人の風貌は実によく似合う。竹中英太郎が乱歩をモデルにして乱歩世界を描いた『大江春泥作品画譜』が、乱歩の逆鱗に触れたというエピソードを思い出しもした。乱歩先生がこの写真集を見たらやはり激怒するかもしれないが、これはこれで面白いのだから仕方ない。


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