カーシュ,G『廃墟の歌声』

カーシュ,G『廃墟の歌声』



 先の『壜の中の手記』に続く日本で独自にまとめられた短編集。
 どうも第一集に比べると突出したものがあまりない。どちらかというと昔からあるネタが多い気がする。もちろん昔からあるネタと言ってもこの作家が先鞭をつけたものも無論あるのだろうが、今となっては知るすべもない。 どうしてもそういうネタにこの作家ならどのように変奏したかを楽しむという読み方にならざるを得ない。

 前半六編の綺譚が特にその傾向が強い。表題作「廃墟の歌声」は、突然の災厄で滅びた古代都市アンナンの廃墟を探検する男が奇怪な生き物に遭う話だが、結末でああこれかと思った。
 「盤上の悪魔」は、自分を追いかけるポルターガイストから逃れようと苦闘してそして敗れ去るチェスの選手の話。
 語り手の怪異に対する距離感が絶妙であり、不気味な雰囲気が効果的にかき立てられる。

 「カームジンの銀行泥棒」以下四編が、「史上最大の犯罪者、もしくは史上まれに見る大ほら吹き」と呼ばれる詐欺師カームジンを主人公とするシリーズである。ごく短いものもあるが、語りによる騙りの魅力が溢れていて、無条件に楽しい。「カームジンと宝石泥棒」の結末など想像するとかなり笑える。

 結末二編はもう少し長いもの。「魚のお告げ」は、作者はウェールズに引退した歴史学の博士から聞かされた話。博士は巨大な鯉を捕まえてアーサー王の埋もれた財宝の鍵となる指輪をもらう。その指輪に導かれて博士は地下の洞窟を彷徨することになった。 ほら話としてはスケールが大きいが、結構陰鬱。
 「クックー伍長の身の上話」でもかなりの奇想が展開されるが、やはりやりきれなさが残る。

 この作品集も悪くはないけれど、読むのなら『壜の中の手記』からの方がいいだろう。


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