冬孤堂こと宇佐見陶子シリーズの第二長編。
陶子は店舗を持たない旗師と言われる骨董商だが、今回は卑劣な罠によって古物商許可証を取り上げられて自らの拠り所を失い、苦しい闘いを強いられる。
陶子がある骨董市で二枚の青銅鏡を競り落としたことが全ての発端だった。その品物の片割れはいつの間にか見覚えのない三角縁神獣鏡に変わっていた。それを手にしたために周りで起こる不穏な動き。
身を裂かれるような思いで本来の持ち主と称する人物に鏡を引き渡したときに、何の気なしに陶子がつぶやいた言葉が彼女を奈落に突き落とす。
全てを失った陶子はたった一人でも逆襲にかかろうとするが、そんな彼女を気遣うカメラマンの横尾硝子は民俗学者の蓮杖那智を引き合わせる。
先ず、陶子がかけられる罠が絶妙。これだったら警察だって信じるだろうし再起不能級の打撃である。罠の種は何と村山槐多の水彩画。後でこの画家でならなかった理由もきちんと説明はされるものの、探偵小説ファンとしては名前が出てくるだけで喜んでしまう。
宇佐美陶子と蓮杖那智の二枚看板競演は豪華。しかもこの話は蓮杖那智シリーズの「双死神」と同じ事件である。同じ事件を二人のシリーズキャラクターの事件簿に別々に収めるというのは前代未聞の趣向である。しかし、同じ話だから「双死神」を読んでいると途中までは話が割れてちょっと興ざめするが、これは致し方ない。
蓮杖那智と内藤三國との「香菜里屋」での邂逅を終えて、陶子は敵の懐に飛び込んでいく。そこでの舌鋒によるせめぎ合いの凄まじさ。そしてどんでん返しの連続。
いろんな趣向を盛り込んだために話がごちゃごちゃしてしまった感じがある。しかも一応これで完結はしているものの、まだまだ後を引きそうだ。
意欲作であり力作である。