マガジンハウス刊『謎のギャラリー』(1998)の加筆訂正文庫版。
当代随一の読み手による架空アンソロジーの試み。編集者の女性を相棒に興が赴くまましゃべりまくる。お題は「リドルストーリー」「中国公案小説と日本最初の本格ミステリ」「こわい話」「賭け事、あるいはゲーム」「恋について」「謎解き物語について」と多彩。
北村薫と言えば、創元推理文庫『日本探偵小説全集』の編集にも参画し、近年には『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』がある名アンソロジストである。また、『空飛ぶ馬』に始まる「円紫さんと私」シリーズは隅から隅まで書名が詰まったビブリオ・ミステリでもあった。そんな彼がここでも実に楽しそうに本について語る。
主に短編、そして長編の一部分について連想の行きつくまま。対象は古今東西。ジャンルもミステリに限らず、あるいは小説だけでもなく随筆、詩、TVドラマ、落語とありとあらゆる分野に及ぶ。
そうして連想によって関連付けられたタイトルの組み合わせを見るとまるで連句の付け句のよう。新しい小宇宙がそれだけで生まれる。
挙げられたタイトルにはもちろん読んでいたものもあれば未読のものもある。読んでいたものについては、そうそうそれと大きくうなづきたくなる。未読のものについては言及された本が読みたくなってしまう。大量の積ん読を抱えている身にとっては実に罪作りな本である。
だが、これをしっかり読み解いて自分の血と肉にしていったものから次の世代の読み手が育ってくるのだとも思えた。
私としては実践編のアンソロジー三冊に目を通すだけで満足することにしよう。