一昨年の私的いちおし新人だった古処誠二の三作目。デビュー作『UNKNOWN』の自衛官探偵シリーズの二巻目で、前作に引き続き防衛庁調査班の朝香二尉と今回は原隊を離れて出向任務の野上三曹とが活躍する。
二人が調査に赴いたのは東シナ海に浮かぶ伊栗島の分屯基地。
なんと訓練中に小銃が紛失するという前代未聞の不祥事が起こったというのだ。状況から犯人は絶対に基地内部にいる。
前作では一般社会から白眼視される基地や自衛官の描写がなかなか印象的だったが、今回は離島という立地と司令官の人徳のおかげで基地は島民にも受け入れられていた。
そんな自衛官にとって理想的な環境でいったい何者がこんな暴挙を行ったのか。
それとも本土沖縄間の通信の要所であるこの島を狙う何処からの侵入者が糸を引いているのだろうか。
作者のうまさをまたしても実感させられた。細かな描写の積み重ねが意外な真相に説得力を与える。AならばB、BならばCというロジックの積み重ねで登場人物の行動は決定される。これこそがまさに本格ものの醍醐味である。
そして自衛隊という舞台装置のために社会派的な色彩も加わる。
本格派と社会派の融合は島田荘司がたびたび試みたが、一番成功した『奇想、天を動かす』でもやはり木に竹を継ぐような感は否めなかった。
古処作品にはそんな派手さはない代りに地に足がついた安定感がある。
それは虐げられた弱者への愛惜や共感というテーマが社会派の一面としてあるとするのなら、今の日本では自衛隊もそれに含まれるからだ。
また一方、結末で朝香二尉に行動の判断を任された人物がどういう選択をするかを考えてみるのもよいだろう。
今後どんなものを書いてくれるかますます楽しみである。