なんと本書の角書きは「探偵小説」。京極堂シリーズに登場する榎木津礼次郎を主役とする中編集である。
榎木津探偵は旧華族出身の美丈夫であり、人の記憶を見る能力を持つ。さらにその性格のけたたましさは凄まじいものがある。
私にとっても榎木津は好きなキャラクターである。だが、懸念していることがあった。そもそも榎木津は、関口も同じだが、『姑獲鳥の夏』のあの一発ネタのために創造された登場人物である。だから、二作目以降ではどうしても精彩を失わざるを得ない。
例えば、『絡新婦の理』で榎木津の登場するシーンは極めて格好いい。だが、巻末で京極堂により「榎木津の眼をかわす方法」が考案されている。蜘蛛が同じ手を使ったことは間違いない。即ち榎木津は道化に堕ちていたわけだ。
このままシリーズが進んでいって、果たして榎木津に前途があるのか非常に心配であり、本書によりそれが晴れるかどうかが一番の関心事だった。
だが、それは残念ながら解消されなかった。
京極堂が出てきたら、やはり榎木津は食われてしまう。京極堂抜きでやれたらどうにかなったのかもしれないが、天才京極夏彦を以ってしてもそれは無理な相談なのか。
ということで、1999年の三冊の内では、『巷説百物語』がベストに決まり。