京極堂シリーズの外伝の三冊目。一冊目『百鬼夜行−陰』は京極堂シリーズ中の一場面を切り出した<妖怪小説>、二冊目『百器徒然袋−雨』は榎木津探偵が活躍する<探偵小説>、そして三冊目の本書は「多々良先生行状記」の副題がある<冒険小説>とのこと。
在野の妖怪研究家、多々良勝五郎は『塗仏の宴 宴の支度』の最終話「おとろし」に登場した。京極堂中禅寺秋彦が芥川似なら、多々良は菊池寛に似ているという好対照である。
だが、本書の多々良先生の描写は織作茜の視点とは全く違う。助手の沼上の筆による多々良は妖怪馬鹿そのものである。
多々良と沼上のコンビは地方の伝説を求めて放浪する。山梨、長野、群馬、そして山形。いつもいつも珍道中の挙句に奇妙な事件に巻き込まれる。
基本形としては、事件の謎と鳥山石燕の『画図百鬼夜行』の妖怪の解釈が絡み、多々良が妖怪の謎を解くと同時にいつのまにかに事件も解決してしまうというもの。多々良先生は京極堂と違って妖怪にしか関心がなく、事件が解決するのは犯人側の誤解による自白というパターンが多い。
京極堂シリーズよりは全般的に軽め。だが、意図的に地方を舞台にしたことで伝統的な村と近代化の相克がより明確に現れる。
第四話では京極堂も友情出演、憑物落しを見せてくれる。
京極堂シリーズの本筋に絡められなかった妖怪のネタを小出しにしてきた感じ。一定の水準はクリアしているものの、それよりも『陰摩羅鬼の瑕』を早く書いてほしいというのは読者のわがままだろうか。
第四話の里村医師の登場場面はどこかで言及されていたはずだとシリーズを引っ張り出してきてついつい読み耽ってしまった。京極堂シリーズはやっぱり面白いわ。