京極夏彦『塗仏の宴 宴の始末』

京極夏彦『塗仏の宴 宴の始末』


 さんざんばら撒かれた謎が一挙に解決。お見事。

 上巻で支度された宴はいよいよ最高潮へ。いつしか流れは韮山山中の佐伯屋敷への到達競争となる。怪人物・怪団体に京極一党が加わっての大乱戦。
 憑き物落としのためのページが残り少ないなと危惧していたら……。

 まさかこうなるとは思わなかった。だが非常にわかりやすい種明かしだった。何が起こったのか何度も読み直さないと理解できなかった『絡新婦の理』に比べると遥かに単純な構造である。

 逆に言えば、この上下分冊の大長編は、京極堂中禅寺秋彦とある怪人物との対決のプロローグに過ぎないわけだ。
 今後このシリーズはどこへ向かっていくのだろうか。宴の後の物寂しさのためだけではない一抹の不安を感じつつもやっぱり期待してしまう。

 詳細な分析はまた後日、某所で。


******以下ねたばれ注意******

<真相予想の検証>
 第一話
 陸軍第十二研究所は確かに関与していた。関わらなかったのは京極堂のみ。
 謎の薬売りはやはり尾国誠一。彼は元内務省特務機関員として佐伯家の秘密を探り出した。
 そして堂島は京極堂の元上司。『塗仏の宴』という大長編はこの人物の紹介編といった趣きになった。

 第二話
 村上兵吉と兄貫一の存在はわざと仕掛けられた秘鍵だった。彼らが戸人村に至ったときにもゲームは終了になった。
 少年時代の兵吉が収容されたのは中野学校の前身。
 尾国は邪魔物の兵吉を結局は伊豆七島まで誘い出したという。

第三話

第四話

第五話
 尾国誠一は、布由のセコンドとなり、彼女をゲームの勝利者とするために策動していた。
 ゲーム参加者八人のうちで佐伯屋敷の相続権を持たないのは、磐田純陽と通玄の二人のみ。彼らの参謀役である刑部と宮田が土地の相続者たちを狙っていた。上の地主は加藤只二郎、下の地主は三木春子。そして佐伯布由は本家の者。
 尾国や<韓流気道会>の岩井の工作はその妨害行為であった。
 藍童子は主催者側の人間としてゲームを混乱させていた。


第六話
 織作茜の死と関口の逮捕は京極堂への警告であった。そしてその真の実行者の存在も。ゲームを妨害できるのは京極堂しかいないから。
 そしてそのゲームの判定者(ジャッジ)の存在。織作茜ほどの人物を犠牲にしてまで、この事件の黒幕は読者に強く印象付けられた。


******以下ねたばれ注意******

<怪しい人リスト・改訂版>
曹方士
 道教系新興宗教<成仙道>の真人,黄金の仮面を被る
 本名・佐伯甲兵衛,佐伯家の先代

刑部(おさかべ)
 <成仙道>の幹部,村上兵吉にかけられた術を見抜き利用しようとするが、尾国誠一に見破られる,三木春子の身柄を確保,村上貫一の一家を惑わす,加藤家のお手伝い木村よね子を篭絡
 本名・刑部昭二,陸軍第十二研究所所属の博士,音響催眠術の研究

韓大人
 中国式古武術道場<韓流気道会>会長,政治結社
 本名・佐伯葵之介,佐伯家当主

岩井
 <韓流気道会>師範代,華仙姑・中禅寺敦子を狙う
 本名・岩井崇,陸軍第十二研究所所属の中尉

南雲正陽(正司)
 経営コンサルタント,<太斗風水塾>塾長,風水師,羽田製鉄に雇われる,伊豆の土地に本社を移転しようとするが経歴詐称が発覚,土建屋桑田組を用い<成仙道>の韮山入り阻止を図る
 本名・佐伯亥之介,佐伯家の跡取り,布由の兄

華仙姑(かせんこ)処女(おとめ)
 霊媒師,昭和の妲己,実は尾国誠一に催眠術で操られていた
 本名・佐伯布由

尾国誠一
 薬売り,華仙姑の黒幕,加藤麻美子を罠に掛ける,十五年前に戸人村に出入り,一柳朱美の夫の商売仲間
 本名・雑賀(さいが)誠一,元内務省特務機関山辺班

磐田純陽
 <みちの教え>修身会会長,村上兵吉に術を掛ける?,加藤只二郎を篭絡
 本名・岩田壬兵衛,佐伯甲兵衛の弟,佐伯家を勘当

通玄(張果老)
 漢方薬局<条山房>主人,長寿延命講主宰,<韓流気道会>から敦子と華仙姑を救う,三木春子の土地を狙う
 本名・佐伯玄蔵,壬兵衛の息子,漢方医

宮田
 <条山房>の通玄の弟子
 本名・宮田耀一,陸軍第十二研究所所属の博士,即効性催眠剤の研究

東野鉄男
 <徐福研究会>主宰,在野の学者,徐福記念館建設の候補地として伊豆の土地を提案,経歴詐称,陸軍で兵器開発?
 本名・佐伯乙松,葵之介の弟,布由の叔父

藍童子(彩賀笙)
 霊感少年,目黒署の岩川に協力し、通玄のからくりを暴く,内藤を罠にかける,浮浪児を束ね、華仙姑を攫う
 佐伯初音の遺児

堂島静軒
 自称郷土史家,六芒星の紋,「この世には不思議でないものなどないのです」,韮山に出入り
 陸軍第十二研究所の大佐,中禅寺少尉の元上司,ゲームの判定者(ジャッジ)


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