本編の主人公は妖怪「豆腐小僧」。お盆に載せた豆腐を大事そうに捧げ持つ大頭の小僧の形の妖怪である。妖怪なのに全く恐くない、お間抜けで滑稽なキャラクターである。
豆腐小僧が廃屋となった豆腐屋に突如沸いて、自分は何者なのか何をすればいいのか探し出す。始めの方はいろいろな妖怪と出会って対話して、妖怪の仕組みについて知っていく。そのうち豆腐小僧に意外な出自があることが明らかになる。
そのために豆腐小僧は尊王攘夷運動とリンクした、妖怪界を揺るがしかねない大陰謀に巻き込まれてしまう。
探偵小説では全くないが、京極堂シリーズや『巷説百物語』シリーズでも出てきた言説や妖怪の再登場があるので京極読者は必読。妖怪小説であるが全くの怪異は描いていない。妖怪が出てきても概念であって、妖怪がいると感じた人間だけが見ることができる。一方で妖怪の方では人間には何も影響を及ぼせない。そんな大前提でのルールがある。かなり厳しい制約だが、その元でもストーリーを進ませるのはさすがである。
豆腐小僧は見かけ通りの馬鹿な主人公。周りの妖怪をいつもはらはらさせる。それなのにすったもんだの挙句に親兄弟と感動の再会を果たして、また大騒動を見事に終結させる。
妖怪を主人公にしていても、ある意味古典的とも言っていいくらいの教養小説にもなっている。
タイトルにある「ふりだし」は後で気づいたが、これもシリーズものの第一作だった。愛すべき豆腐小僧の今後の活躍が楽しみ。
本の形は正方形で豆腐そっくり。面白いアイディアではあるけど持ち運びにくく読みにくかった。