山田風太郎の死去のために生きているうちで一番好きな作家がいきなり京極夏彦になってしまった。
本作は『巷説百物語』の続編。悪党どもを妖怪の仕業に見せ掛けて退治する小股潜りの又市とその一統が再び登場。前作は一編一編が実に巧妙に組立てられた非常に質の高い短編集であった。
今回の妖怪は、人体に突き刺さるほどの勢いで小石を飛ばす「野鉄砲」。殺されても殺されても甦ってくる「狐者異」。男を取り殺す女怪、火の亡者の「飛縁魔」。平家の亡霊とも言われる「船幽霊」など。
今回は前作と随分読み心地が違う。一編一編がかなり長くなっていること。視点を堅気である考物の百介に固定してあること。事触れの治平や山猫廻しのおぎんなど一味の出自に直接関わる話が多いこと。個々の話の有機的な関連がかなり強いこと。そして後になればなるほど扱われる事件が大きくなること。
特に「死神」のスケールは凄い。
怪異の正体はかなり前の話から伏線が張られているがそれでも驚く。
小藩なりといえども一国の命運を揺り動かしていく。
激しい戦いの末に闇の者たちは闇の世界へ帰っていく。
最終話を読み終えるとどうしようもない寂しさに襲われた。
なお、カバー裏にも仕掛けがあるのだが、これは読み終わってから見たほうがいいだろう。
『ルー=ガルー』にしろ本書にしろ悪くはなく私的偏愛作家の地位はそれなりに安泰。
だが、京極に対してはまだやはりそれ以上のものを期待してしまう。