第19回メフィスト賞受賞作品。
「俺」はサンディエゴの総合病院に勤める腕利きの外科医。今日も患者をメチャクチャに切り裂いてからチャッチャッチャッと縫い合わせて一丁あがり。ところが珍しく日本から連絡が入る。おふくろが頭に怪我をして意識不明の重態だというのだ。「俺」は病院から白衣にコートを羽織っただけでその足で日本への飛行機に乗り、一度は捨てた故郷の福井県西暁町に向かう。
郷里に着いた「俺」は中学時代の友人に会い、西暁町で中年以上の主婦の頭を殴打して地面に穴を掘って生き埋めにしていく事件が続発していることを聞かされる。
「俺」の母親は五番目の被害者であったのだ。
「俺」奈津川四郎は復讐を誓い犯人の追い詰めに掛かる。
いろいろ前情報からJ文学みたいなのを想像していた。どんなに読みづらいかとおそるおそる読み出したが冒頭のテンポは快調。
ところがそのあと回想シーンに入るがこれが結構つらい。奈津川四兄弟の次男二郎と父丸雄の確執。
暴力で生きていくことを選んだ二郎の容赦のない学校生活の描写。
そんな二人に挟まれてやはりどこかが歪んでいく長兄一郎と二人の弟三郎四郎。父親の保守系政治家という仕事と二郎の暴力で田舎の濃密な人間関係の中で疎まれていく兄弟。
一家の唯一の絆だった祖母が死ぬ直前に癌の痛みに耐えかねてこんな虚無的な言葉を漏らす。
人間死んだら煙か土か食い物や。火に焼かれて煙になるか、地に埋められて土んなるか、下手したらケモノに食べられてまうんやで。
推理小説のガジェットはあちこちにばら撒かれる。
少年時代の二郎が消えた三角形の蔵の密室。
連続殴打生き埋め犯の残す被害者のミッシング・リングと暗号の謎。
操りテーマらしきものも微妙に見え隠れする。
酒鬼薔薇事件を明らかにモデルにしたような部分もある。
だが、ミステリー的な要素はおちょくりの対象でしかないようにも見える。
好みは分かれるだろうが文章に読ませる力がある。
そこそこ面白く、取り敢えず第二作も読んでみたいと思わされた。