中編集。表題作は「群像」に発表されて第15回三島賞候補作となった。
「熊の場所」の主人公の男の子は、同じクラスのまー君が切り取った猫の尻尾をランドセルに入れているのを見つける。恐慌をきたして家に逃げ帰ったが、頭に浮かんだのは父親がかつてカナダで熊に出会ったときの体験談だった。恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない。少年はまー君と対峙する覚悟を決める。
「バット男」は、バットを持ち歩いて人を威嚇しながらもいつも逆に殴られてばかりいる男の通り名。語り手は自ら揉め事を呼び込みひどい目にあうバット男のありさまに宿命的悪循環を感じ暗然としている。そんなときバット男が何者かにとうとう殺された。だがバット男は死んでも、バット男的不幸のシステムはなくなることがなく、語り手の先輩の大賀夫妻は不幸の坂を転がり落ちる。
「ピコーン!」のチョコは暴走族の哲也といい仲だが、いい加減に今の生活から抜け出そうとする。自分は大検の勉強をし哲也には就職を勧めるが、その交換条件として哲也が持ち出したのは何とも奇妙なことだった。そんなこんなで改善に向かっていた二人の生活だが突然の哲也の死により断ち切られる。発見された哲也の死体には奇怪な見立てが施されていた。
「熊の場所」と「ピコーン!」の舞台はお馴染み福井県西暁町で、「バット男」は東京都調布市。犯罪や謎はあるから一応ミステリの範疇に入る。
だが「熊の場所」の後半の犯罪とその発覚はとって付けたよう。テーマにしても描写にしても的確な話なのだがそこだけが浮いている。
「バット男」の殺人犯は結局わからないまま。
「ピコーン!」の哲也の死体の見立ての無意味さにはチョコとともに呆れ果てる。
舞城にとってミステリとは何なのだろうか。
私はミステリを書きながらもミステリに対しての愛が薄いと感じられる作家は好きになれない。だが、さんざんミステリをおちょくっている舞城からは不思議とそんな感じがしない。