オール・タイム・ベスト書評

松本清張


(16)『点と線』
 芥川賞作家だった清張がこの作品を書いて以来、日本の推理小説は社会派一辺倒になってしまった。それも頭にエセがつく。そして社会派は本格味の薄い推理小説の代名詞となり、そうしたくずを書いたやからの使う言い訳は− 人間が書きたかった。馬鹿言っちゃいかん。この作品に関して言えば、動機は社会派風で探偵も平凡な刑事だけど、骨格は
鮎川哲也の作品にも負けないくらいしっかりしている。リアリズムの推理小説イコール風俗小説なんて完全な御門違いだ!
 つまらない社会派全盛に対する反動としてあの横溝正史ブームは起こった。そして赤川次郎出現後の今はユーモア・ミステリの最盛期。毎週あんなに出てるけど、いったい誰が買ってんのかねえ。もうこれも長くはあるまい。次はぜひともディクスン・カーに復活してもらいたいものだ。(正史が受けたんだからカーが受けないはずはないのになあ。)
  65点。但し本格度73点。



(23)『砂の器』
 松本清張の推理小説を読んだのはこれでやっと二回目です。
 犯人の動機とか、刑事の試行錯誤とか、その辺が社会派なんでしょうな。しかし、ある男をいかにも犯人らしく書いておいて途中からいきなりぼかせば、作者が何を仕掛けようとしているかぐらいわかります。トリックだって
海野十三に先例のあるやつだし……。ぶちぶち。
 これを読んだおかげでまたまた当分の間、社会派を読む気が失せました。
  55点。但し、社会派性わしゃ知らん。



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