kashibaさんからお譲りいただいた本。kashibaさんにフクさんという二大読み達者が誉めようがないと突き放していたので心して読んだ。なるほどこういう話か。
推理小説の大家安田新次郎の元に江戸川乱歩の未発表作だという触れ込みの原稿が持ち込まれる。「弟子」とタイトルが記されたそれは、江戸川乱歩を慕って集った四人の若者の間に石田ヒカリという踊り子を巡るさやあてが生じ、遂には殺人が起こるという内容だった。しかもその殺人に至る糸を引いていたのが乱歩自身だというのだ。
四人の弟子の一人だった安田はその内容に驚愕する。これが乱歩の真作のはずがない。だが、当時を知る誰がこれを書いたのか。
一方、四人組の一人である政治家谷村萬右衛門にかつての石田ヒカリを思わせる謎の美女が接近しようとしていた。
やりたいことはわかるんだけどなあ。
戦前の一時期、著者と同年代の青年のグループが著者の伯父である乱歩の邸に出入りしていたのは事実であり、そのころの仲間の名前が献詞に記されている。乱歩のポール・ブールジェ「弟子」に対する愛着も本当のことである。
この頃の乱歩を人形師に仕立てて操りテーマで一本書いてみたいというのは非常によくわかる。
だけどなあ。前半部は文章が荒れている。この人こんなに下手だったっけと思わされてしまった。
さらに後半部の展開は目を覆いたくなる。
これだけで作家松村喜雄を評価してほしくないと思うような出来だった。
遺作となった『ふたりの乱歩』はもっと面白かった。本頁の読書日記第一号で、なんとなく個人的に思い入れがある。松村を切って捨てる前にこちらをご賞味いただければ幸いです。