江戸川乱歩の女賊黒蜥蜴対名探偵明智小五郎という通俗長編を三島由紀夫が戯曲化したもの。
美輪明宏主演の映画は見たことがあるが戯曲で読むのは初めて。
原作(1934)からの変更点として舞台の一部が大阪から東京になったこと、時代設定が戦前から執筆当時の昭和三十年代になったことなどあるが、
その構造は殆ど変わっていない。宝石商の娘の誘拐と、ダイヤモンド「エジプトの星」の強奪、女賊と探偵の激しい攻防の末にやがて女賊の心に生じる探偵への恋、という骨格はまるで変わらない。
大きく変わっているのは台詞である。女賊や探偵の話す言葉の一つ一つが艶やかで煌びやかなものになっている。
これが三島由紀夫の世界だろうが、実につくりものの楽しさがある。まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのようである。
お気に入りは、永遠の愛の像と化して飾られるはずの行きずりの二人が、格好だけでなくて真実愛し合っているのではないかと気づくところ。外面と内面のこのあっけらかんとした反転は実に凄い。
明智の最後の台詞、「本当の宝石はもう死んでしまった」の意味も深いものがある。
本文は170ページほどだが、付録が100ページもついているのも嬉しい。