ミッチェル,G『ソルトマーシュの殺人』

ミッチェル,G『ソルトマーシュの殺人』


 国書刊行会世界探偵小説全集第三期の最終巻。 ミッチェルはかつてポケミスで『トム・ブラウンの死体』一冊が出ただけでその後の四十数年間も長編の紹介がない幻の作家であった。

 ソルトマーシュはイギリスのどこにでもありそうな小さな村。語り手はその村の教会の副牧師の青年ノエル・ウェルズ。牧師館でメイドをしていた娘が父親の知れない子をはらんだことが事件の予兆となったかのように村に変なことがいろいろ起こり出す。子供が生まれてその父親が領主さまではないかとの噂が流れ、村の変人ガッティ夫妻の夫の方が地下室に閉じ込められ、採石場近くのバンガローを訪れた副牧師とウィリアム少年を何者かが襲撃する。 村祭りの日、総出での大騒ぎをよそに事件はひっそりと起きた。
 ちょうど領主さまのお陣屋に滞在していたのが心理学者のミセス・ブラッドリー。トカゲにもワニにも似ている陰険そうな老婦人だが、ガッティ夫人の言葉を聞いただけでたちどころにその夫の居場所を見い出すなど鋭いところを見せる。殺人を犯したとして逮捕された男の無実を証明するためにミセス・ブラッドリーは立つ。

 訳者あとがきも触れているが、作者の書き方はどこかしら変である。 変な書き方で変人たちを書いている。 書き振りが変であっても読んでる途中が面白くて仕方なく、また結末もうまく決めてくれた。 これは傑作と言ってもいいのでは。
 作中に奇人変人は大挙して出てくるが、探偵役としてのミセス・ブラッドリーの個性はひたすら際立つ。一度人を殺して裁判にかけられて無罪になったと言ったり、被告側につけた著名な弁護士が実は息子だったり、底が知れない。結末に付録として載っているのがミセス・ブラッドリーの手帳で、どんなに早く真相を喝破し事件を導いていったかが示される。

 クリスティほども著作があるというミッチェルの他の作品を読んでみたくなった。


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