『模倣犯』と同じ年に出た作者初の書き下ろしの文庫。『模倣犯』の武上悦郎刑事と『クロスファイア』の石津ちか子刑事が共演している。
一種の密室劇のような趣きがある。
事件は食品会社の課長が新築中の自宅の工事現場で刺殺されたというもの。彼には妻と一人の娘があった。被害者と関わりのある女性がその少し前に殺されていて、これは連続殺人事件だと見做された。
さらには被害者がネット上で擬似家族をつくってその父親役を演じていたことが判明した。
武上刑事は病で倒れた先輩の中本刑事の意思を継いでとある仕掛けを施すことになる。被害者の本当の娘、本当の妻、そして擬似家族の娘、息子、妻を呼んだ取調べで明らかになっていく事実。
緊迫感、疾走感に溢れぐいぐい読み込ませる。結末までひたすらまっしぐらである。
ネタ自体はわりとわかりやすいのだが、これだけ読む途中が面白ければ文句はない。長編にしては短いので書き下ろしとなったのだが、この長さで一番生きる小説である。さすがにうまい。