岡野さんへのお便り

岡野さんへのお便り


 前回の岡野さんのお便りは実に晴れがましかったです。寄稿者冥利に尽きます。「あらゆる意味で凄い」とは余りにも余りにものお言葉。僕はそんなにたいそうな文章を書いているのでしょうか。最近パワーが落ちてないかと少し心配していたんですが。
 僕は岡野さんとは割と関わりが薄かったと思います。僕が本格的に活動を始める前に岡野さんは余り部室へ来なくなってしまわれたから。五十嵐さん曰く、「宮沢はデビューが遅かった」。でも、岡野さんの存在は残された仕事の数々からひしひしと感じていたし、その人からここまで誉められると本当に嬉しいです。
 僕のやっていることは当時も今も同じ。自分というものをぶつけること。東北大SF研という何でも許され、何でも認めてもらえる場において。
 僕はSFはとうとう好きになれなかったけど、探偵小説が大好きで、その情熱をいろいろな形で表現してきました。昔はSF研における自分の存在基盤をつくるために、そして現在はいろんな人(自分自身をも含めた)に刺激を与えるために。
 今いろいろと忙しくて、本もなかなか冊数をこなせなくなったし、文章は<霧笛>に雑文を書いているだけです。でも、探偵小説に対する情熱は失いたくないし、その情熱がある限り自分の思いを文章にしていき続けるつもりです。どうぞ今後もよろしくお願いします。
 ただ御忠告。僕は相当好みが片寄っているのでそのままは信用しないように。「やはり探偵小説を読むものとしては、宮沢君のお勧めも読まなきゃだめかなぁと思ったりしていたので」ということは全くありません。僕は、ゲリラであれ、を信条の一つとしている人間ですから。

 さて、もうひとつ。「彼は何をして食っているんですか」という質問にお答えしておきます。僕は某メーカーで液晶ディスプレイの基礎研究をしています。なんと!物理で飯を食っているんですよ! 僕の仕事は液晶ディスプレイを構成する素子のパラメータの最適化。液晶という物質は棒状の分子から成り立っておりこれの電圧による配向変化は弾性力学から解析できます。そして液晶セルや位相差板、偏光板などの光学素子を透過する光の状態はマックスウェル方程式で記述できます。皆さんのお手元にもあるはずの液晶パネルの明るさの電圧依存性や斜め視角での色変化などは全て物理的に解析できてコンピューターで計算できるんですよ。
 物理というのは探偵小説の次くらいに好きなものでこれで食っていけるというのはたいへん幸せだと思っています。ただどうしても自分の世界にこもってしまいがちになる。目先の問題を解決するのはとっても面白い。論理的に犯人を追いつめていく過程によく似ている。でも、技術動向やら商品開発とかを見据えるのは苦手。この辺は自分の幅を広げていきたいものだと思っています。
 液晶は産業の紙だと言われています。かつて真空管を駆逐した半導体は産業の米と言われました。最後まで生き残った真空管であるブラウン管に液晶は近々とって代わるはずです。こうした変革期に立ち会えるのは研究者冥利、なんだろうな、多分。
 ということです。たこい君が<糸納豆>に醸造の話書いてて、とっても面白く読んだけど、他のみんなの仕事に対する想いとかも読んでみたいと思いませんか。



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