中井英夫展

中井英夫展


 都心に出る用事があったので、中井英夫展行く。
 神田。鉄道の高架が複雑に交わる一角。ビルの4階。デルタ・ミラージュ。なにかのスタジオみたいなところ。古書店とバーを併設。こじんまりとした雰囲気。

 中井英夫の生涯を振り返るパネルが並ぶ。
 祖父誠太郎や父猛之進のこと。五人兄弟の写真。母茂子の愛児健康日誌。
 田端の近辺を散策する写真。脳病院。与楽寺。赤紙仁王。

 <新思潮>の椿実や吉行淳之介の原稿。寺山修司や三島由紀夫の献本。中城ふみ子の『乳房喪失』成立の顛末を伝える新聞の切り抜き。

 『黒鳥譚』や『とらんぷ譚』の自筆原稿。『虚無への供物』構想表。
 『虚無への供物』出版記念パーティー芳名録の実物。出席者の名前を見ていると飽きない。乱歩先生からは病気のため欠席との葉書が。
 羽根木の家への転居通知。東京都世田谷区羽根木2-25-21。

 会場の一隅に机、書棚が配置され書斎が再現されている。机の上には<黒鳥館用箋>と銘入りの空白の原稿用紙。

 渡辺啓助が贈った「流薔園」の額。
 竹中英太郎の色紙。血の滴るような怨の一字。浮き出てくるような蟷螂。

 遺品の眼鏡や万年筆。自分宛ての未開封の封書。その上書きされた日付は1969.3.12夜。中身にはいったい何が。

 田中貞夫や姉千枝への哀悼の詩。
 死の間際のポートレート。『黒鳥座X1』の端書き。

 『黄泉戸喫』の箱入限定300部No.入りがまだ残っていたので逡巡の末買う。私の買ったのはNo.295。
 ドリンク・サービスでコーヒー頼む。一服しながら本多正一写真展のアルバムめくる。

 帰宅後入手した『黄泉戸喫』を読み返す。
 『虚無への供物』は書いてはならぬ書だったのか。未知の読者に向かっての「宛名のない手紙」が感慨を誘う。



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