オール・タイム・ベスト書評

小栗虫太郎


(11)『黒死館殺人事件』
 この一作により世界の探偵小説を打ち切る。そんな気魄が感じられる作品です。出るは、出るは。密室、暗号、変死体、特異体質、遠隔殺人、筋書殺人、心理試験、黒魔術、謎の足跡、地下坑道等々。犯人はファウスト博士にも模される怪人物。その上に不気味な死者の意志まで加わります。そして全編に奔流するペダントリーの数々。これは紛れもない奇書です。
 しかし、この作品の欠点は、その奇書だという所にあるのです。度を越して素材が詰め込まれたために文学以前と言われるくらい読み難い文章となっています。ペダントリーもあまりに奇怪なために却って現実を遊離した印象を与えてしまいます。それでも名作であることに違いはないのですが。
  89点。但し読み難さ82点。



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