乙一は若い読者から圧倒的な人気を得ているが、この作は2003年度「このミス」2位、「本格ミス」5位、そしてSRベスト8位に輝いた。
若い世代だけでなくて多くの読者の支持を受けている作品だろう。
私が乙一を読むのは「夏と花火と私の死体」以来。
GOTHとはGOTHIC(ゴシック)の略で「ゴス」と発音する。本文中と表紙カバーの袖に説明がある。”それは文化でありファッションでありスタイルだ。人間を処刑する道具や拷問の方法を知りたがり殺人者の心を覗き込むもの、人間の暗黒部分に惹かれるものたちがGOTHと呼ばれる。僕とクラスメートの森野夜がそうだ”。
”僕”と森野夜の周辺には様々な快楽殺人者が跳梁し、”僕”は特に彼らにこっそり近づいて観察しようとする。
誘拐して殺した後にその人体を細々と切り刻む者。男女を問わず手に惹かれ、被害者を気絶させ切り取って持ち去る者。土の中に生きた人間を埋めることに執着する者。近所の犬を誘拐して食い殺すことを続ける少女と飼い犬。
そんな連中にときには森野が狙われることもあるが、”僕”は慌てず騒がず助けに向かう。そんな彼と彼女を主人公とする連作短編集。
ミステリー的な手法にこだわったと後書きにあり、中にはテキスト的トリックを用いたものもある。ただそれ自体はさほど感心できるレベルではない。
異様な設定であるが、まず主人公の二人組に共感し、さらにはそれぞれの作中の快楽殺人者にも共感するようになる。それは読者が自らの暗黒面を覗き込む行為であるが、それも一種の癒しにつながる。
例え残虐な犯罪が行われていても、どの話の読後感もそんなに悪くはない。
あくまで健全娯楽であるところが長所であり、また短所でもあると言えるだろうか。