オール・タイム・ベスト書評
クイーン,E
(1)『Yの悲劇』
これはまあたいていベスト・ワンに来る古典的名作ですな。一分の隙もない論理性、意外な犯人、完全なフェア・プレイなど申し分ありません。これはある意味で本格推理小説の目差す目標に一番近い作品なのかもしれません。
もちろん批判もあります。長男や次女の不品行を小市民的な道徳観念で大袈裟な物に書き立てているとか、探偵がキザだとか……。でも私には少しも気にならないのでパスします。
しかしひとつだけかなり気になるところがあります。
「レーンには、警部の荒い呼吸と手探りの音が聞こえた。」(第二幕第一場)
私はこいつでドルリー・レーンは実はつんぼのふりをしているだけなのだと推理してしまった。どうしてくれる!
93点。但しまぎらわしさ72点。
(7)『エジプト十字架の謎』
このかつての名作も今では随分古びてしまいました。ここで使われたメイン・トリックは次々と新しいパターンが生み出されているのです。ストレートに近い形で使われているこの作品は、少々目の肥えた読者なら看破が可能です。と言ってもこれを読まないうちに目を肥やすのは難しいだろうけど。
この作品が書かれたのは、クイーンの一番油の乗った時期。同年に国名シリーズの『ギリシア館』とバーナービ・ロス名義の『X』と『Yの悲劇』を書いています。従って論理性は完璧で、筋を知っていても楽しく読めました。特にトリックの崩れる切掛けがうまいです。
77点。但しエジプト度24点。
(9)『Xの悲劇』
第一の殺人に使われる凶器が実にいいのです。コルク玉に縫針を植えつけニコチン毒を塗ったもの。これほど簡単にして効果的な凶器はまずありません。ニコチン毒は殺虫液を蒸留するだけでとれるので足もつきません。ただポケットに入れてやるだけで、人込みに紛れて狙った相手のみを確実に倒すことができます。しかし、唯一の欠点をレーンに突かれて犯人の仮面は落ちたのです。
この独創的な凶器の発案に比べれば、第三の殺人のダイイング・メッセージなんぞたいしたことありません。
79点。但し凶器の素晴らしさ86点。
(21)『災厄の町』
この作品はいわゆるライツヴィル物の第一作で従来の国名シリーズやロス名義四部作とはがらりと作風が変わっています。とはいえただ単にじめじめしているだけのような気も。まあ好みの問題か……。
で、中身についてですが、犯人の心理がいまいちわからん。「××は病気だったんだ。」で片付けられる問題じゃないでしょう。それに根本のところに一つ大きな疑問が。実に説明不足です。
64点。但し災厄度92点。
(22)『ギリシア棺の謎』
クイーン(作者)の最盛期に書かれたクイーン(探偵)の駆け出しの頃の事件です。
鼻眼鏡を振回し、引用癖をひけらかす若きエラリーの悪戦苦闘が見られます。最初の推理によって事件解決と思われたが、あっという間に引っ繰り返される。二回戦、犯人の完璧きわまる偽装も天佑により粉砕される。三度目にエラリーは罠を仕掛け、四回戦に勝利する。
これといったトリックも使ってないし、これだけ分厚いのに殺人二つだけだけれどまあよろしいんじゃないですか。
70点。但し機密保護度10点。
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