ロジャーズ,J.T.『赤い右手』

ロジャーズ,J.T.『赤い右手』



 カルト的名作だとか、アンフェアぎりぎりだとか、前評判がかなりありました。どんなもんかいと読んでみたら、まあそんなにとんでもなくもない。と『コズミック』なんかを読んでしまった最近の読者ならそう思うでしょう。それでもいつ騙されるか、何が仕掛けてあるのか、どきどきしながら読むというのは、なかなか嬉しい体験でありました。

 結婚しようと自動車旅行中のカップルが拾ったヒッチハイカー。その男の眼は赤く、片耳は裂け、犬のように尖った歯が生えていた。
 そして起きた惨事。湖畔での格闘。逃げ出した花嫁は置き去りに。奇怪な男が運転する自動車がコネチカットの片田舎を暴走する。助手席に放り出された男は息絶えているのか。
 そして死体が発見される。極めて無残な姿で。殺人者を捕えようと山狩りをする村の人々は次々と見えない魔手の犠牲になっていく。悪夢のような夜に終わりは来るのか。
 偶然事件に巻き込まれた旅行中の医師が手記を書き綴る。忍び寄る殺人鬼の気配を感じながら。
 記述が複雑。時間の流れがあちこち飛ぶ。記述者の医師自身でさえ怪しげ。とすると叙述自体もどこまで信用できるものなのか。
 見事に解決がつき、解説を読み終えて、なるほどそうだったのかと思っても、本当に他の解釈がありえないのかという思いは残る。

 それにしてもヒッチハイカーの描写はまるで乱歩の『人間豹』のようであったなあ。


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