島田荘司『ハリウッド・サーティフィケイト』

島田荘司『ハリウッド・サーティフィケイト』


 島田荘司デビュー二十周年にあたる昨年の長編はこれと『ロシア幽霊軍艦事件』の二本。後者の方の評判はよかったが、前者の方は今一つぽかったので後回しにしてしまったが読んでみたら結構よかった。

 全編舞台はアメリカ。レオナ・マツザキの親友である女優パトリシア・クローガーが殺された。犯人はクローガーに銃を突き付けて脅し抜いて殺した上にその一部始終を収めたビデオテープを関係者に送りつけてきた。しかも彼女の死体は切り裂かれ子宮と脊髄の一部がなくなっていた。 レオナは次に狙われるのは自分だと思い、また親友の復讐のために事件の謎に挑む。
 レオナの元に転がり込んできた女優志望のジョアンは記憶の一部を欠落させていた。彼女が意識を回復させたとき子宮と卵巣と片方の腎臓がなくなっていたという。彼女がイギリスにいたときいっしょにいたイアンという男がクローガー事件の犯人ではないかとレオナはにらむ。レオナはジョアンからイアンが収集していたというケルトのいろいろな伝説を聞き出す。そんなときまた別の女優が襲われたが……。

 レオナが主人公。御手洗は後半に国際電話で知恵を貸す役どころ。
 事件の背景が非常に大掛かり。*SF的な趣向*はちょっとアンフェアかとも思うが、『奇想、天を動かす』がOKならこれも許されるだろう。 なによりもアメリカの悪を書くという気構えがこもる。 人間の悪徳の華が咲き乱れたのは何も現代のハリウッドばかりでなく古代ローマでもナチ占領下のパリでも同じだったという指摘はさすがに鋭い。
 残念ながらちょっと書き方が荒い。 レオナがいくらなんでも無鉄砲すぎる。登場人物が軽率な行動を取ればどうしても読者としては白ける。それにやっぱり長すぎる。二割は削れるはずだ。
 それでもずっとあとから出発した後輩作家たちが次々と書けなくなってきているのにこれだけのものを書いている島田荘司はやっぱり凄い。

 明らかに続編があるという終わり方なのだが、次はどうなるだろう。ニューヨークの事件前ぎりぎりの出版だったわけだが、次作はあの事件を取り入れないわけにはいかないだろう。島荘がアメリカの現在をどう斬るのか期待したい。



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