島田荘司の御手洗ものの長編。日本を離れスウェーデンのウプラサ大教授となった御手洗の語る事件。
オーロラの振る中、スコットランドのネス湖畔の小村ティモシーで狂乱の事件が起こった。村の六十歳台の女性が次々と殺され死体が分断されてばらまかれる。
最初の犠牲者は切り落とされた首がプードルの胴体にすげられ木の枝にかけられていた。
次の犠牲者は手足がない姿で消防自動車の上に置かれた。
それぞれの死体の切断箇所は刃物で切られたのではなく、大きな力でもぎ取られたよう。
現場付近には愚かな人間をあざ笑うかのように魔神の咆哮がこだまする。
幼い頃にこの村で暮らし母親に対する村の女性の仕打ちを恨みに思う画家の手記が挿入され、物語の底流を伝えるとともにさらに大きな混迷を投げかける。
島田荘司の長編としてはつまらない方の部類。
禁じ手すれすれの大技を用いながらもそれが物語に貢献しているようには思えないのがまず痛い。
小技の方は結構効いている。魔神の咆哮の正体とか、ダイイング・メッセージのダヴィデの星など、読者に見破れるかどうかはわからないがうまい。
画家の記憶と事件の結びつきの理由付けはこうきたかと思わされた。
だがこれほど魅力的な題材でこの人が扱いながらもこの程度にしかならなかったという勿体なさの方が先立ってしまう。犯人の動機付けが不十分で犯罪の深刻さに釣り合わないからか。残念。