『甦る「幻影城」』
『甦る「幻影城」』
角川書店 カドカワ・エンタテイメント
T 1997.08.25 U 1997.11.25
T <新人賞傑作選>
「乾谷」 村岡圭三
「DL2号機事件」 泡坂妻夫
「さすらい」 滝原満(田中文雄)
「炎の結晶」 霜月信二郎
「変調二人羽織」 連城三紀彦
「蒼月宮殺人事件」 堊城白人
「緑の草原に……」 田中芳樹(李家豊)
「贋作たけくらべ」 中上正文
U <幻の名作>
僕は<幻影城>には乗り遅れてしまった。僕が高校一年生のときに休刊した雑誌。大学時代に古本屋で出会い、全巻集めることを決意させられた。未だに僕のベスト・マガジンは<幻影城>であり、ベスト編集者は島崎博編集長です。
まだ持っていない号は、2巻。
ミステリーブームも円熟期に達し、その種を蒔いた<幻影城>に脚光が当たり出したのだろうか。
まず、Uから読んだ。なかなか凄い/懐かしい名前が並んでいる。<新青年>や<宝石>でデビューした作家が<幻影城>で復活したときの新作。
本田緒生。<新青年>時代にはたいした話がなかったが、これはちょっと凄いよ。
地味井平造。牧逸馬/林不忘/谷譲次の弟。画家。代表作は「煙突奇談」「魔」「水色の目の女」。これも小品ながら味わい深い。
瀬下耽。代表作「綱」「柘榴病」など幻想味の強い短編。これはいまいち。
水上呂理。「麻痺性癡呆患者の工作」はなかなかとんでもない話だった。これは本職の化学工業業界の一挿話。
三石介太郎。これはいただけないけど、「霧の夜」「空間心中の顛末」とか大好き。
朝山蜻一。風俗味と幻想味の不思議な融合。ふしぎ文学館(出版芸術社)の『白昼艶夢』もつん読のままだから早く読まなきゃ。
氷川瓏。渡辺剣次の兄。「睡蓮夫人」など記憶に残る幻想短編が幾つか。
香住春吾。この人はユーモア・ミステリーならぬペーソス・ミステリーの名手。「一割泥棒」なぞ、大笑いさせられながらも、懸命に生き抜く市井の人々の思いにしんみりさせられた。
宮原龍雄。「三つの樽」などの本格短編を残す。これも真っ向からの本格。
狩久については、こちらを参照。
新羽精之。この人の最高作は「進化論の問題」。単純な理屈の積重ねがとんでもない結論を呼び出すブラック・ユーモアと残酷性。
Tの方は新人賞傑作選。泡坂妻夫、田中文雄、連城三紀彦、田中芳樹と現役ばりばりの作家の処女短編が並ぶ。竹本健治は『匣の中の失楽』でデビューだから除外だけど、栗本薫の評論「都築道夫の生活と推理」は加えてもよかったんじゃないかな。
で、問題は鳴かず飛ばずで終った新人の方。
村岡圭三。泡坂が佳作のときの入選だが、殆ど活躍しなかった。叙情派になるのか。
霜月信二郎。これとか「密室のショパン」とか、探偵小説に存分に拘った作品があった。特に後者では画期的な妙手を考案。
堊城白人。小栗虫太郎のオマージュか。この美文調はパロディにしか見えん。
中上正文。休刊直前だったから、活躍しようもなかった。
Vは<不朽の探偵小説>だそうで、どんなものが拝めるだろうか。
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