一般的には『宝島』で、ミステリ読者的には『ジキル博士とハイド氏』や『新アラビアン・ナイト』で、あまりにも有名なスティーヴンスン。本書は、彼の継子ロイド・オズボーンが書いた原案をスティーブンスンが改稿した合作で、彼の唯一のミステリ長編とも言われるそうだ。
悪名高いトンチン年金の生き残りであるフィンズベリー兄弟の兄マスターマンと弟ジョゼフは、どちらかの死により残った方が莫大な富を得ることになっていた。
それを当てにする甥のモリスとジョンに生活をいちいち干渉されて息苦しい思いをしていたジョゼフは、突然の鉄道事故を幸いとして脱走する。ところが甥たちは別人の死体をジョゼフのものと取り違えたことから大騒動が持ちあがる。その死を隠そうと死体を持ち去るが、死体を詰めて発送した箱は偶然が重なって一癖ある連中の間を転々と行き来する。まるでババ抜きの札のように。
マスターマンの息子マイケルは、モリスの苦境を勘付くとともに自らも死体の押し付け合いに巻き込まれる。
死体はどこに行きつくか。そして財産をめぐるモリスとマイケルの争いの決着は。
なんと言うか、一筋縄で行かない作品である。訳者あとがきで指摘されているが、当時の探偵小説を揶揄する記述があちこちに見られる。
ブラックな味わいがよい。死体を巡るどたばたは後年の『ハリーの災難』を思わせる。ただ悪党同士の虚々実々の駆け引きというには、海千山千の弁護士マイケルに対するモリスが貧弱すぎて、ワンサイドゲームになってしまっているが。
それにしてもこれだけの大物のこれだけの作品の存在すらを今まで知らないでいたというのは驚き。