ようやく図書館の順番が回ってきたので。2001年度第47回江戸川乱歩賞受賞作。
三上純一は傷害致死事件で松山刑務所で二年間服役して仮釈放で出所の日を迎えた。親元に戻った純一は被害者の遺族への賠償のために両親が払った犠牲に初めて気づいて愕然とする。そんなとき顔見知りの刑務官の南郷正二が接触してきた。純一と組んで期限つきの仕事をやりたいと言う。それは死刑囚の冤罪を晴らすことだった。
その事件は純一にも縁がある千葉県中湊郡で十年前に起きていた。
元中学校長夫妻が惨殺され、容疑者樹原亮はその近くでバイクの事故を起こして意識不明で見つかった。非行歴から元校長に保護観察処分を受けていた樹原は物証もあって不利だったが、なんと事故で頭を打ったせいで彼には事件当時の記憶が全くなくなっていた。
そのため改悛の情を示すことができず死刑判決へとつながってしまった。
度重ねた再審請求も通らずただ刑の執行を待つのみとなった彼の脳裏に甦ったのは、必死の思いで階段を上がっている光景だった。
死刑、刑務所、保護司制度などをよく調べてありうまく事件に絡ませている。死刑執行というタイムリミットを設けてサスペンスをも盛り上げる。
主人公二人が二人とも秘めたものを持ちそれぞれの思いで冤罪を晴らすという行為に関わる。元犯罪者として、死刑執行を任務とした刑務官として、この手で人を殺した過去と向き合いながら。
完全に明かされずぼかされている部分が読んでいて引っかかるがそれが終盤への展開に生きてくる。
結末では思わず息をのまされた。
無理なところはいろいろあるのだが、新人第一作としてはよい出来である。
前回の首藤瓜於『脳男』に引き続きそこそこの秀作が出てくれてようやくこの歴史ある賞が復調し始めたようである。うれしいことだ。