(31)『時の娘』
退屈な入院生活に辟易したグラント警部はふとしたことから一枚の肖像画を手にした。甥の幼い王子二人を殺して王位についた残虐非道のリチャード三世。だが、その顔は断じて犯罪者のものではない。疑問を感じた彼は、あり余る暇を使い、見舞い客の手を借りて歴史の闇に隠された真実に迫る。
彼の用いたのは敏腕警部の操作方法そのままでした。伝聞を排し、物証を重んじ、常に誰が利益を得たのかを考える。これが歴史家の馬鹿さ加減を浮き彫りにし、悲劇の君主に汚名を着せたものの正体を暴きます。
病床探偵(ベッド・ディテクティブ)、歴史ミステリの二重の趣向を生かしきった傑作です。この作品が七年後に高木彬光をして『成吉思汗の秘密』を書かしめたことは衆知の事実です。
日本人の私が読んでも充分面白かったけれど、英国ではリチャード三世はお伽話の怪物みたいになっているそうで、英国人にとってはさぞ衝撃的な書だったことでしょう。
76点。但しトニイパンディ度100点。