(19)『危険な童話』
仮釈放で出所したばかりの男が殺された。現場は従兄弟の未亡人のピアの教師の家。木曾刑事は彼女をクロと睨んだが物証がまるでない。そこへ奇妙な投書が……。
現実的かつ独創的なトリックが無数に組み合わされてこの作品を形作っています。特に凶器の消失トリックは逸品です。(ここ二十年の間に科学捜査も相当進歩して今ではちょっと使えそうもないが。)
しかし、それだけではありません。なによりも力が入っているのはその犯罪の背景です。作者がこの一章が書きたかったのでこの作品を書いたとまで言った終章。被害者と加害者の間の悲劇的な宿命。人間というものの絶望的な孤独。読者は鋭く胸を抉られます。
75点。但し慟哭度84点。
初出 <探偵小説>5号[1986.08.08]
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