都筑道夫『退職刑事2』

都筑道夫『退職刑事2』



 元版は1976年、徳間書店より『四十分間の女』のタイトルで刊行。退職刑事シリーズの2冊目。今回もなかなか快調。

 「遺書の意匠」では、明日の芝居の切符を買った男が遺書を残して自殺した。
 「遅れてきた犯人」では、警察に保護を頼んだ犯人が刑事とともにホテルの部屋に戻ると、どこからどう運び込まれたのかその恋人が殺されていた。
 「銀の爪きり鋏」では、自宅で殺されたホステスは右手の爪だけをきれいに切っていた。
 「四十分間の女」では、毎晩毎晩続けて浜松に上り終列車で来て下り終列車で帰っていった女が一週間目に死体で発見された。
 「浴槽の花嫁」では、新婚旅行中の女がホテルのバスルームで殺されたが、彼女はその日に五人の客を呼んでいた。
 「真冬のビキニ」では、冬のさなかの海岸で水着の女の死体が発見された。
 「扉のない密室」では、結婚式の控え室で花婿が刺し殺されたがそこは完全な密室だった。

 発端の奇妙な謎を息子や知人から話を聞きながら退職刑事が推理を巡らせる。
 この頃の魅力は、結末に至るまでのああでもないこうでもないという思考実験である。そのものずばりを喝破するよりも、途中の無駄道が多くて最後にそれがそれが一直線に連なったときの方が面白い。

 本集中では「四十分間の女」と「真冬のビキニ」は実際の事件を元にしたものだという。確かに「四十分間の女」は、奇妙な状況に合理的な説明をつけ、その上で埋もれた犯罪とその犯人を告発するという離れ業を行っている。実に見事であり、このシリーズ全体を代表する作品である。
 「扉のない密室」も、登場人物の性格をしっかりつくったからこそ組み立てられた職人芸のようなパズルであった。

 第2集まではまだまだ傑作といえる作品が多く、作者自らが代表作と胸を張るのにふさわしい短編集である。


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