シドニー五輪閉幕記念で純オーストラリア産のミステリ。白人とアポリジニの混血であるナポレオン・ボナパルト(ボニー)警部ものの一作。
古くはこのシリーズの中の一作が東京創元社Crime clubに『名探偵ナポレオン』(1958)として入っていた。そして1980年代にハヤカワ・ミステリ文庫で3冊出たが、現在品切れ中。
西オーストラリア州パースよりかなり内陸の町エーガー・ラングーン。そこからも離れた山奥に放置されていたジープの中で警官ステンハウスの射殺死体が発見された。
行動をともにしていた現地人の助手ジャッキー・マスグレーヴの姿が見えないため、犯人はその助手ではないかと疑われた。
たまたま近くにいたボナパルト警部は現場に赴いて明らかな作為の跡を発見する。偽装工作の悪知恵と痕跡を消し去る巧みさとで、これは白人とアポリジニの両者が関与した事件だ、そう彼は断定する。
オーストラリアの内地の雰囲気がよく出ている。一面に岩石やブッシュの広大な風景。集落を結ぶ悪路を辿っていて人に出くわすことなどまずない。
そこに棲むのは白人は牧場の開拓者か鉱山師。原住民は白人に雇われているものから昔ながらの風習を守るものまで様々。
ジャッキーの死をのろしで伝え聞いて、普段は殆ど白人と接触しない彼の部族のものたちが独自の行動をとるが、それが自然現象並みに予測不能かつ制御不能。ボニーがそれにどう対処するかも見所の一つ。
ボニー警部は伝道所で育って大学まで出たといい、いわゆる失われた世代の一人であろう。だが、本書のうちではあまりアポリジニとの混血の面は強調されない。
わりと面白かったので、あと2冊を探し出して読んでみたい。