オール・タイム・ベスト書評
ヴァン・ダイン,S.S.
(12)『僧正殺人事件』
(13)『グリーン家殺人事件』
ヴァン・ダインは殆ど売れないそうです。シチュエイションが古くて今の読者には読めないんだそうです。
もともと売れない要素はありますが。「一人の作家が生涯に六つ以上の創意ある長編探偵小説の筋を考案することは不可能だ。」と言いながらも、ジャーナリズムに負けてその倍の長編を書いたこと。そして皮肉にも自分の言明どおり傑作は六編しかなかったこと −これは周知の事実です。これじゃあ売れるとしても半分だけです。自慢じゃないが私も五作しか読んでおりません。
ところで久しぶりにこの二作を読み直しましたが(『グリーン家』なんて十年ぶりに)、別に読みづらくはありませんでした。尤も私自身がシチュエイションとやらが古い人間だからかもしれません。
前者は、お馴染みの童謡殺人劇で、関係者が数学者や物理学者ばかりという怖い代物です。最初に読んだときミス・ディレクションにまんまとかかり、感激したものです。今ではさほどとは思いませんが。
後者は今回、犯人がボロを出しそうになるたびにうまく繕う様が楽しめました。さすが名作、古びてもなかなか味なものです。
(12)80点。(13)75点。但し記述者の目立たなさ73点。
ヴァン・ダインは作中でワトソン役なのですが、実に目立ちません。話しかけもかけられもせず、まるで背後霊が記述したみたいです。
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