国書刊行会の<ミステリーの本棚>の最終巻。このシリーズはミステリーがミステリーとして成立する直前直後の時期の物語を集め、その中には
R・L・スティーヴンスン&L・オズボーン『箱ちがい』やP・ワイルド『悪党どものお楽しみ』のように今読んでも十二分に面白いものも含まれた。
本書の作者は江戸川乱歩編『世界短編傑作集4』(創元推理文庫)に収められた「銀の仮面」で知られる。本シリーズで唯一の幻想恐怖小説短編集である。
「銀の仮面」の味の悪さは忘れがたい。裕福な婦人が貧しい青年の一家に情けをかけたばかりに少しずつ居場所をのっとられていく。婦人には何の落ち度もなく青年たちが暴力に訴えるわけでもない。徐々に徐々に取り返しのつかないところまで持っていかれる恐怖と結末の残酷さ。
この作者はおそらくこの短編が最高作であり、他の作品も似たような感触はある。理由のないわけのわからない恐怖に取り憑かれた人々。自分だけの価値観にとらわれて奇妙な行動を起こす人々。何か起こるのではないかという不安は必ず現実になる。超自然現象が起こる話もあるが、神経症で説明がついてしまわないわけでもない。
ホラーは私の守備範囲外で、陰鬱な雰囲気にはちょっと辟易。