ワイルド,P『悪党どものお楽しみ』

ワイルド,P『悪党どものお楽しみ』



 この作者は江戸川乱歩編『世界短編傑作集3』(創元推理文庫)に収められた「堕天使の冒険」に強い印象を持っている。それがシリーズものの一編とは知らず、まさか今になってその全編が読めるようになるとは思わなかった。
 長編『検屍裁判』も多分読んでいると思うが、忘れた。

 六年間の放浪の後に改心した元凄腕賭博師のビル・パームリーが主人公。すっかり農業青年となった彼を相棒のお調子者の友人トニー・クラグホーンが引っ張り出す。
 シリーズの最初の方では海千山千のペテン師たちを相手にする。そいつらがどんな手段で不可能を可能にしているか。一方でビルがどういう手段でいかさまを見破りペテン師を制裁するか。
 だが、後半では一作ごとに趣向を変えてくる。一方が不自然なほど勝ちつづけているのにどうしてもいかさまを見ぬけない状況。トニーがビルの代役でいかさま破りに派遣されたとき。ビル自身が依頼によっていかさまを仕掛ける側に立った場合。
 そんな変奏であってもミステリーのつぼをきちんと押さえていて飽きさせない。

 大恐慌直前のなにかと浮かれ騒いでいたアメリカの一スケッチ。作者はその風景を冷静に見詰めている。古いミステリーはいいなあ。


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