『オルランド』映画評

『オルランド』映画評


 さて、前記『カルパチアの城』を読んでいたら、歌姫ラ・スティラ急死の場面に驚かされました。
 テレク伯爵と結婚するために最後の舞台となった一幕。魂全てを傾けて歌い尽くしている、そのクライマックス。初めて桟敷席から姿を現したゴルツ男爵の異様な風貌を見て歌姫は悶死する。
 そのオペラがなんと、マエストロ・アルコナッティの『オルランドー』だったのですね。

 ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』はアリオスト『狂乱のオルランド』から来ており、それで映画の日本語表記が『オルランド』となっているわけです。ひょっとするとオペラの方とも何か関係あるのかなあ。ヴェルヌの方の怪奇な雰囲気とは全く違うけど。

 さて、『オーランドー』は以下のような話です。
 主人公オーランドーは1588年頃すみれ色の目をした美少年。詩人でエリザベス女王の寵臣。やがてトルコ大使として政務にはげむが暴動の最中に七日間眠って目覚めると女に変身していた。18世紀の英国に帰ったレイディ・オーランドーは文士たちのパトロンになり、19世紀には時代風潮に染まって結婚、そして20世紀、少年の頃から書き続けてきた長詩『樫の木』を出版、受賞する。1928年現在、オーランドーは36才の両性具有の女性詩人。(パンフレットより)

 映画『オルランド』もまさにこのとおりの話でした。でも、原作がその時点の現代まで続いたように、映画も1990年代まで続きます。
 身重のオルランドが戦場を逃げ回る1カット。そして現代。原稿を出版し、娘とくつろぐオルランドに天使が歌いかけてくる。

   突き抜けて 壁を突き抜けて
   溝を飛び越えて あなたの所へ
   一つに合体するこの瞬間
   歓喜に身をゆだねて 私はついに自由を手にした
   ついに過去から 切り離されて
   手まねく未来からも 解放されて…

   突き抜けて 壁を突き抜けて
   私はもう女でもなく 男でもない
   顔は人間で 一人に溶け合った
   顔は人間で 一人に溶け合った
   この地球にいて 同時に宇宙に存在する
   この世に生まれ 同時に死を迎えている
   この地球にいて 同時に宇宙にも存在する
   この世に生まれ 同時に死を迎えている

 とにかく感動、でした。何しろこちらもいっしょに400年つき合ってきたのですからね。原作もこの映画と同じくらいの感動を与えてくれたら大したものと言えよう。世界幻想文学体系なら図書館に確実にありますね。今は制限一杯まで借りちゃったから、正月明けには借りてみましょう。

 森さんのおっしゃるように、この映画ではヘアのシーンがカットされていません。眠りから目覚めたオルランドが自分の全身を鏡に写し、女性になったことに気づくシーンです。慌てず騒がず彼女/彼はつぶやきます。
 「前と同じ人間。何も変わらない。
  性が変わっただけ。」

 まあ、ヘアシーン目当てに見に行っても得るものは大きいんじゃないの(笑)



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