オール・タイム・ベスト書評
ウールリッチ,C/アイリッシュ,W
(3)『幻の女』 アイリシュ,W
これを読み直したのは、小学生のとき以来です。懐かしかったなあ。
「夜は若く、彼も若かった。が、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」
−この書き出しはあまりにも有名です。
さて、アイリッシュまたの名ウールリッチはサスペンスの作家です。彼が好んで取り上げるプロットは、 −ごく普通の人間がある凶悪な犯罪に巻き込まれ、無実の罪を負う。窮地に追い込まれた彼は、名探偵顔負けの推理力を発揮し事件を解決する。 −このパターンが好きで一時期夢中になって読んだものでした。
この作品にはさらに不可解性が加わります。誰もその姿を見たものがいない“幻の女(Phantom Lady)”がそれです。唯一の証人である彼女は何処に?死刑囚となった彼のために恋人や親友の活躍が続きます。
そして意外な結末とくるべきなんですが……。当時小学生の私は犯人を見破ってしまいました。別に作者の書き方が悪かったわけではないんです。ただ私がその頃から既に人間というものを信用していなかっただけです。なぜ人間を信用しなくなったかというと……やめた、暗い。
76点。但し人間不信度55点。
まだまだ甘い!
(30)『喪服のランデブー』 ウールリッチ,C
昔は好きな作家でした。サスペンスを書かせたら右に出るものなし。都会小説の名手でもあります。でも、感傷が少々鼻についてきて。
この話も読み始めると浪花節ならぬウールリッチ節にたちまち呑み込まれてしまいます。理不尽な事故によって恋人を奪われた男。永遠にいやされぬ傷を心に負った彼は、事件の関係者を探し求め、その恋人や娘に死を与えて回る。
寓話とでも呼びたくなるような悲しく残酷な恋への鎮魂曲です。これで六章にポカミスがなければ。
70点。但しポイ投げ禁止度96点。
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