山田風太郎『江戸にいる私』

山田風太郎『江戸にいる私』



 時代小説短編集。戦国時代から江戸時代まで。
 「山田真竜軒」は、荒木又右衛門の仇討の陰の逸話。

 「悲恋華陣」は、羽柴秀吉に攻め立てられた播州三木城の悲劇。落城寸前の毛利方が一矢報いられたのは、自らを犠牲とする決断をした家老の娘沙羅のため。

 「黒百合抄」は、秀吉の正室北政所の侍女の語り。淀君に大阪城を渡し京の三本木に隠棲した北政所。関ヶ原の戦いで、大阪城の変で、このお方が果たした役割とは。

 「明智太閤」は、明智光秀が天下取りをした顛末。本能寺の変の第一報が高松城に入ったことで、羽柴軍は敗走。山崎の戦いで勝利した光秀に栄光は転がり込んできたが……。

 「叛心十六歳」では、若き日の由比正雪を描く。軍学道場に奉公する民部之介は謎の人物五代から世の矛盾を散々吹き込まれる。さらに次代の将軍家光の醜態を見せられるが……。

 最後の中編『江戸にいる私』は、タイムスリップもの。物書きの主人公は正月の祝の膳にちょんまげの鬘をかぶって付いたが、妻と息子から大顰蹙を買う。やけ酒の果てに酔いつぶれ、目覚めたときは江戸時代。田沼意次が支配する世の中で彼が見たものは、昭和とどこが違うのかと思わせるものばかり。だが、彼の友人平賀源内は無惨な最期を遂げ、そこには松平定信の不気味な姿が……。

 表題作以外の全ての短編に印象的な女人が登場する。歴史を裏から動かしているのは女だというのも風太郎史観なのだろう。



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