山田風太郎『風来忍法帖』

山田風太郎『風来忍法帖』


 風太郎忍法帖の第九作。<週刊大衆>に1963年3月から連載され、講談社から1964年4月に初単行本化。『忍法忠臣蔵』との間には、『信玄忍法帖』が入る。
 忍法帖シリーズの中でもとりわけ陽気な一品。時は戦国時代。豊臣秀吉の天下統一を賭けた小田原攻めでの一挿話。

 七人の香具師たちが主人公。戦に紛れて掻っ攫った北条の奥方息女たちを売り飛ばす荒稼ぎをしていた彼らを一喝した者がいた。それは武州岩槻城の麻也姫。太田道灌の血を引く姫は三人の風摩忍者に守られて戦場を見学中だった。完全に舐めきっていた女に度肝を抜かれた屈辱。特にわらじで顔を踏みつけにされた悪源太は怒り心頭に達する。これは姫君を強姦でもしないとおさまりがつかない。
 麻也姫は同じ武州忍(おし)城にお輿入れ。ところが新婚早々のご主人である城主は小田原城に召集され、城の指揮は麻也姫が取ることになってしまう。そこに忍び込んだ香具師七人組は風摩忍者三人衆にこてんぱんの目に合わされ、再起を決して自らも風摩の忍術修行を志すことになる。
 見事豊臣秀吉の馬印の黄金の千成瓢箪を盗み出した香具師たちは卒業試験に合格。三人衆と交代で念願の忍城に派遣される。悪源太の性戯にめろめろになったくノ一七人衆も一緒である。
 忍城を攻めるは石田三成の大軍。だが、一歩も引けをとらない麻也姫の陣頭振り。悪源太たちの決死の活躍もあって、三成の水攻めを崩壊させる。
 勝ち戦に沸く忍城。だが、今度は敵の使者として訪れてきたのは、先の風摩忍者三人衆だった。

 ここまでが全700ページ中の450ページくらい。ここからは『甲賀忍法帖』『くノ一忍法帖』以来の忍者集団同士の撃滅戦となる。
 風摩三人衆の強さは並でない。一筋の髪の毛で触れるものは人体でも青竹でも切り裂く忍法「風閂」の使い手であり、切り落とされた自らの体をつなげて再生させる戸来刑四郎。砂の型を使って若い女に自在に化ける御巫燐馬。手から出す体液で触れたものを鏡と化し無数の残像に紛れ攻撃してくる累破蓮斎。
 こんな強敵たちを七人の香具師たちが己の得意技で迎え撃つ。自分の命を投げ出して。いつしか最初の目的を忘れ果てて。
 忍の城の運命、そして麻也姫の運命は。

 面白く、やがて悲しい。だが、しみじみと心が洗われる一品。


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