山田風太郎『外道忍法帖』

山田風太郎『外道忍法帖』


 河出文庫の忍法帖シリーズ第二弾。
 風太郎忍法帖第六作。<週刊新潮>に1961年8月から1962年1月まで連載され1963年3月に講談社刊。 『くノ一忍法帖』『忍者月影抄』の後で『忍法忠臣蔵』の前。

 冒頭には「山屋敷秘図」で圧倒的な存在感を見せた背教者フェレイラ神父が再登場。フェレイラが遣欧少年使節の後身であるジュリアン中浦神父から預った青銅の十字架には、ローマ法王が日本に教会建堂のために賜った莫大な黄金の隠し場所が秘められているという。 胎内に純金の鈴を宿した十五人の切支丹の処女をその十字架を振ることによって鈴が共鳴して見分けることができるというのだ。
 老中松平伊豆守が探索の命を下したのは天草扇千代率いる天草一族。秀吉の九州征伐で滅びた天草家再興に燃える彼らは切支丹を憎むこと甚だしく、その上に伊賀で忍法まで修行していた。 一方、耳聡くそれを聞きつけた張孔堂由比正雪も配下の甲賀忍者を放った。 これにて大友忍法を仕込まれた切支丹の十五童貞女を挟んで、十五対十五対十五の激しい三つ巴の戦いが始まった。
 長崎へ赴いた扇千代はジュリアン中浦の従者であったミカエル助蔵を斬るがそのときに目蓋を縫い取られて視力と忍法を失う。 無力になった扇千代を拾い上げたのは丸山で評判の遊女伽羅だった。伽羅は扇千代の言いつけに従って彼の部下を長崎じゅうを訪ねて回るが、行く先々で伊賀組と甲賀組と十五童貞女が殺し合い、伽羅は残された金の鈴を拾い上げてくることになる。

 忍者の数でいったら『甲賀忍法帖』の十対十の対決の何と2.4倍である。それだけに展開が目まぐるしい。意味ありげな男女が登場したら、直ぐに正体が忍者か十五童貞女であることが明かされ、忽ちのうちに殺し合う。忍法を披露する間もなく殺されてしまう者も結構多い。ここまでばたばた死んでいくのは忍法帖にしてもかなり異色である。
 十五童貞女は死ぬ前にマリアとイエスの生涯を描いた十五玄義図に殉教の挨拶の口上を述べる。だが潔い死に様は伊賀甲賀の忍者もさほど変わりはしない。日本人の忠誠心の強さの戯画のようである。

 そうした過程を経てなだれ込んだ結末がまた凄絶である。十五童貞女を配下として従えたマリア天姫がついに姿を現すが、彼女が使う忍法には度肝を抜かれた。扇千代の忍法山彦との雌雄を決める対決、そして切支丹までが道を踏み外したときに三百年後に降りかかるという災厄まで、最小限の簡潔さで語り尽くされる。
 何とも凄い話であった。


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