1975年11月から翌年7月まで<日刊ゲンダイ>連載、1967年に講談社より刊行。作者自身の評価がABCDランクでEだったために初刊以来長らく絶版だった本書がこうして復刊された。
上州の牧童、勝太、通称屁のカッパは女の髪で編んだ投げ縄の名手。単純明快な熱血漢の彼は、父を殺した悪党である藩の役人と土地の親分を討って出奔した。
博徒になろうとカッパは江戸に出る。
お供は女房気取りの元妾のお麦。
文政の江戸で彼に目をつけたのが八丁堀同心、蓮樫瓢兵衛。瓢兵衛はカッパの熱血ぶりが気に入って十手を預けて岡っ引にしようとする。
カッパは喜んで引き受けるが予め瓢兵衛の忠告があったとおり
世の中はカッパの正義感を貫き通すにはままならぬことばかり。
賄賂を受け取らぬばかりに人が死んだり、夜鷹を抱かなかったがためにその女が死んだりもする。
つじつまが合わぬ世の中が底抜けにおおらかだったカッパを荒ませる。
そんな彼の前に姿を現したのは怪僧河内山宗俊。宗俊は将軍に献上するための北斎の枕絵のモデルになる美女を探していたが……。
もちろん第一級の傑作ではないがそれでも充分面白い。
捕物帖のパロディ仕立てになってしまっているが、おそらく風太郎で捕物帖の分類に入るのはこれだけだろう。
いつもながら懸命に生きる登場人物たちが魅力的。
田舎生れの快男児が時代の犠牲になっていくのは
『旅人 国定龍次』と同じ。
悪党は悪党なりにその筋を通そうとする。
二人の美女の境遇の変化はあまりに鮮やかにして哀しい。
風太郎作品においては、どんなに奇想天外な情況であってもそこに息づいているのは時にはしたたかで時には愚かな人間たち。そんな彼らが過酷な条件の中で命を燃やしていく。だからこそ、つくりものであっても、つくりものでない迫力が我々の胸を抉るのだろう。
今回も十分堪能させてもらった。二度と新作が望めないのは今更ながらに悲しい。