山田風太郎『甲賀忍法帖』
山田風太郎『甲賀忍法帖』
講談社文庫 山田風太郎忍法帖1 初版1998.12.15
新刊書
記念すべき風太郎忍法帖の第一弾。
光文社の<面白倶楽部>に1958年12月号から連載され、初単行本化は1959年11月。
徳川三代将軍となるのは、竹千代か、国千代か。徳川家康の密命を受けて、甲賀と伊賀の忍者一族の決闘の火蓋が切られる。
両者の頭目、甲賀弾正と伊賀のお幻は忽ちに相打って息絶える。だが、彼らの孫の甲賀弦之助と朧はお互いに愛し合っていたのだ。
甲賀の卍谷十人衆、伊賀の鍔隠れ十人衆ともに人間離れした秘術を持ったものばかり。粘質の唾液を吐き相手の息をふさぐ人間蜘蛛、風待将監。塩に溶けなめくじのような半流動体に変化する雨夜陣五郎。強烈な吸息により虚空に真空を作り出し、敵の顔面を柘榴のようにはじけさす筑摩小四郎。両腕も両足もないが途方もない速度で這い進む地虫十兵衛(この発想の原典は絶対乱歩の「芋虫」だ)。
こうした忍者同士がお互いに渾身にぶつかり合い命を散らして行く。徳川家の行く末などは歯牙にも懸けず。
どんなに優れた能力でも弱点を突かれるとひとたまりもない。逆に時と場合によっては短所が利点に変わる。一筋縄では行かぬ対決、華麗なる名勝負が実現されるのは山田風太郎の天才があるがゆえ。
だが、弦之介と朧の純愛の行方はどうあっても悲劇に終らざるを得ない。ひとりひとり敵を味方を失っていくごとに、両者の直接対決のときは否応もなく迫り来る。
面白くやがて悲しき一大絵巻。
→冒頭
→山田風太郎目次
→読書日記
→表紙