山田風太郎『忍者 枯葉塔九郎』

山田風太郎『忍者 枯葉塔九郎』



 この短編集が私の読んだ最初の忍法帖ということになるのだろうか。ただ通常言われる忍法帖とは別物らしい。

 「忍者 枝垂七十郎」では、大丸呉服店の娘お市が主人公。大丸屋には諸藩の内情を探索する御庭番の着替え所があった。お市はそこに出入りする一人の青年仏坂堂馬に恋をした。彼は五年たったら戻ってくると言い残して出立した。お市は待ち続けた。だが……。
 待つ女とそれを巻き込む忍者同士の対決の凄愴さ。

 「忍者 枯葉塔九郎」は、斬られてもすぐにつながる肉体を持つ男。浪人筧隼人はこの男に妻を売って仕官の道を譲られた。それから三年後、郡代となった隼人は偶然巡礼二人組を見つけたが……。

 「忍者 本多佐渡守」で、家康の懐刀本多佐渡守は、自分の全ての技を土井大炊頭に伝えようとする。大炊頭は見る。佐渡守が大久保相模守を取り除くためのみに金山奉行大久保石見守長安を失脚させた一部始終を。では、その大炊頭が本多に対してどんな仕打ちをして返したか。
 権謀術策の世界の底知れなさを描いた傑作。

 「忍者 明智十兵衛」は、斬られた腕をまた生やす忍法人蟹を用いる。土岐弥平次は十兵衛が首を切り落とした後、弥平次の顔を生やすことができたなら恋人を譲ると約束する。だが、弥平次は十兵衛と恋人を殺し、十兵衛の家系図を乗っ取った。だがそれから二十年、明智十兵衛となった弥平次は滅びへと向かう。十兵衛の妄執をも受け継いでしまったがために。

 「忍者 車兵五郎」は、江戸赤坂溜池に忍術指南の道場を開く。彼は尾張藩御土井下組の同僚を斬って出奔し、敵として狙われていた。だが、彼がそんな羽目に陥ったのも、育ての親から彼と正反対の忍術を伝授され同僚の妻となった幼馴染みおしのを愛したがためだった。恋した女との命を懸けた忍法合戦の顛末は。

 「忍者 服部半蔵」では、三代目半蔵から四代目半蔵への代替わりを描く。落第生はどうして怪物に変身できたのか。

 「忍者 撫子甚五郎」では、天下分け目の関ヶ原で小早川中納言の腹の内を巡っての伊賀者同士の激突。

 「忍者 傀儡歓兵衛」は、人形を用いて人の心を操る。だが、真に仕掛けられた忍法はその裏にあった。

 実に読みごたえがある傑作短編集であった。


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