『風太郎千年史』

新保博久編『風太郎千年史』



 膨大な風太郎作品の中から選りすぐった一巻本のアンソロジー。
 山田風太郎の筆の及ぶところは、その期間一千年に及ぶ。先ずは、十二世紀宋代の『妖異金瓶梅』。室町ものは短編がないので残念ながら収録なし。切支丹もの、忍法帖から幕末・明治ものへ。そしてデビュー当時の戦後探偵小説。最後を締めるのは、四十年前に書かれた未来小説「1999年」という構成。

 何より嬉しいのは、作者が意に満たないからと再録させなかった幻の短編がいくつも読めること。作者にとっては、「ひでえことしやがる」(「忍法帖完結対談 山田風太郎×馳星周」<IN☆POCKET>1999年10月号 講談社)なんでしょうが。
 「銭鬼」は『妖異金瓶梅』から唯一削除されていた短編。他と較べて別に傑作ではないけど、駄作でもないじゃないですか。藩金蓮が敗北した話というのも興味深い。
 <宝石>の懸賞に当選したデビュー作「達磨峠の事件」も今までずっと不遇でした。タイトルを「達磨峠の殺人」と間違えて記憶されたりもしました。なるほど読んでみて後の風太郎らしさはまるでうかがわれない。医学生の作だということはわかるけれども。でも、やはり特に駄作でもないのでは。
 中学生のときの投稿「中學生と映畫」、十八歳のときに受験雑誌のコンクールで入選した真の処女作「石の下」まで収録。編者の周到さに感嘆します。

 今年もたくさん風太郎が読めました。
 来年もそうでありますように。


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