山田風太郎『白波五人帖/いだてん百里』

山田風太郎『白波五人帖/いだてん百里』


『白波五人帖』


 山田風太郎妖異小説コレクションより、未読だった『白波五人帖』のみ。『いだてん百里』はこちらにレビューがある。 『白波五人帖』の元本は1958年、光文社より。

 元ネタの『白波五人男』のことはぼんやりと歌舞伎に出てくる大泥棒の一味のことだと知っていただけだった。首領の日本左衛門だけは実在の人物で、数百人の群盗を率いて東海の九ヶ国を荒らし回り、世が戦国なら大名になっていたかもしれない大物だという。 「盗みはすれど非道はせず」がモットーで、豪商を襲っては窮民に小判をばら撒いたというから、歌舞伎のヒーローにもなるわけだ。

 風太郎の本書は、歌舞伎の『白波五人男』を題材にした上で同時代の史実を組み込み、虚実が交じり合った壮大な読み物となっている。
 先ず冒頭が首領である日本左衛門の自首であるのが人を食っている。 彼がどのように大盗となり、そしてなぜ自首するようになったかを、当時の木曽川の改修工事を薩摩藩が幕命で請け負った「薩南大評定」を背景にして、壮絶な物語をつむぐ。
 「弁天小僧」の章は、田沼意次の一党に恨みを持つ武家の出自である弁天小僧が、自らの復讐も兼ねて大奥を襲おうとする計画が、首領の自首によって頓挫した顛末。
 「南郷力丸」の章では、首領をどうしても助けたい南郷が町奉行や牢奉行らと凄絶極まりない駆け引きを繰り広げて憤死する。
 「赤星十三郎」の章では、加賀百万石に仕えていた赤星が放逐されたこと自体が後のお家騒動につながり、その凄惨な終幕にも関与する。
 「忠信利平」の章では、四天王の中でたった一人逃げ延びていた忠信利平が意外な形で姿を現す。

 実に風太郎らしい時代小説だが、本書は特に滅びに至るものに対する哀切と共感の念を感じる。


→冒頭
→山田風太郎目次
→読書日記
→表紙